ホームはとても明るかったのですが、人は誰もいませんでした。
ホームからすぐ改札口が見えました。。
自動改札機で、駅員さんはいませんでした。

駅の外は商店街なようでした。
黄色いようなオレンジのような街路灯が、
ぽこんぽこんと照らし出していましたが、どの店もシャッターを閉じて
ひっそりと眠っていました。
そばにバス停がありベンチがあったので座ってみました。
ここからどういけばいいのかがわからなかったからです。
駅員さんか、通る人に聞こうと想っていたのですが、誰もいません。
車が通る気配もありません。
しまったなぁ、と想いながら座っていました。

すると遠慮がちな自転車の灯りの音が聞こえてきました。
するすると灯りがひとつ近づいてきて、
暗がりの中から自転車がすぐそばに現れました。

自転車に乗っていた人は、ベンチに座る私をみて、
ものすごくギョッとしたようでした。
私はとても申し訳ない気持ちがして身をすくめてしまいました。

自転車はあわてたように一瞬スピードがあがったようでしたが、
少し過ぎてなぜかとまりました。
そしてその人は自転車から降りて、押しながら私の前に戻ってきました。
その人は赤いシャツをきた男の人でした。

「今日はもうバスきませんよ?」
その人は私にそういいました。
私は恐縮してこれまでの経緯を簡単に説明しました。

「…電話がわからないのは 困りましたね。
迎えに来てもらうのが一番なのだけど。」
私も心底そうおもいました。
妹は、利発なくせになぜかそうゆう、
抜けようのなさそうなところが抜けるのです。

もう一度住所を聞かれて、私はハガキを赤いシャツの男の人に渡しました。
「ああ、ここらへんなら 歩いてもいけなくはないですよ。」
そしてその人はポケットからペンを取り出して、
書いてもいいか?と私に聞きました。
私がうなづくと、ハガキの余白に
目印の物々を加えた地図を描いてくれました。
私はとてもありがたい気持ちでイッパイでした。

「30分ほど歩く気持ちならつきますよ。
道もそんなに暗くはないでしょう。
ただ、人通りはないかとはおもいますが。」
お礼をいう私に照れくさそうな笑顔を浮かべて、そのひとはいいました。
「でもやっぱり夜道ですから気をつけて。」

私はもう一度御礼をいって描いてもらった方向にあるきだしました。
自転車の音が遠くになってゆくのが 背中に聞こえてました。
私は描いてもらったとおりに商店街を抜けました。
そして広めの通りに沿ってあるいていきました。
途中ガゾリンスタンドのところを右にをまがり、
郵便局のマエの信号も渡りました。
描かれたとおりに、道は少し上り坂になり、
遠目に小学校を眺めながら、小さめなマンションをいくつか超えると、
やはり小さめな戸建が行儀よくならんでいる一角にたどり着けました。

妹はこのうちのどれかの家に居るらしいです。
表札をたぐるまでもなく、多分あそこだろうと、
私には検討がつきました。
その家だけ室内からの灯りが表にもれていました。
そして、私が呼び鈴を押すと、やっぱり妹がでてきたのです。

 

 

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